「謎のカタカナ店名」のデザイン心理|なぜ「マルヨシ」とか「サンエイ」が多いのか?社名の由来について調べてみた

昭和から続く企業やお店の名前にやたらと多い「マル◯◯」や「サン◯◯」の法則、気になったことはありませんか?
たとえば、「マルヨシ」「サンエイ」「ミツワ」「カネコウ」……。
こうしたカタカナの店名、見た目はシンプルなのに、どこか 「長年の信頼がありそう」「堅実な商売をしていそう」 という印象を受ける。
でも、考えてみれば「カタカナの企業名」って、どうしてこんなに多いんでしょう?
そして、なぜ今も残っているのか?
実はこの背景には デザイン的・心理学的・文化的な理由 が隠されています。
今回は、「カタカナ店名の法則」や「昭和の企業名にカタカナが多い理由」を深掘りしつつ、ネーミングに隠された戦略や時代背景まで解説していきます!
なぜ昭和の企業・店舗はカタカナの店名をつけたのか?
1. カタカナは「視認性」と「可読性」が高い
企業や店舗の名前は 「看板や広告に使われることを前提」に考えられます。
そのため、遠くからでも見やすく、すぐに読めることが重要。
カタカナは 直線的な漢字と曲線的なひらがなの中間にあり、どちらの要素も持ち合わせた「バランスのいい文字体系」 です。
例えば、「まるよし」と「マルヨシ」、パッと見で認識しやすいのは圧倒的に「マルヨシ」。
ひらがなや漢字は、線が多くなりすぎて視認性が落ちることがあるため、カタカナの方が看板向きだったのです。
また、戦後から高度経済成長期にかけて 「目立つ看板」 が重視されたため、カタカナはちょうどよかったわけですね。
2. 戦後のモダン化と「ハイカラ」なイメージ
昭和20〜30年代、カタカナは 「新しい時代」 の象徴でした。
特に戦後復興期、欧米文化への憧れが強く、「西洋っぽくて都会的」 という印象を持たせるために、カタカナの企業名が増えました。
たとえば、戦前から続く企業は漢字が多かったですが、戦後に生まれた企業はカタカナを使うことが多かったんです。
昭和のカタカナ企業の例
- トヨタ自動車
- 「豊田(トヨダ)」→「トヨタ」(1937年)
- 画数が8画で縁起が良い、発音が明瞭、個人名を避けるため変更
- 参考:トヨタ公式
- ニッカウヰスキー
- 「大日本果汁」→「ニッカウヰスキー」(1952年)
- ウイスキー事業へ本格移行、「大日本果汁」の略「ニッカ」を採用
- 参考:Wikipedia
- サッポロビール
- 「日本麦酒」→「サッポロビール」(1964年)
- 創業地・札幌のブランド力を活かすため改称
- 参考:サッポロ公式
- エーザイ株式会社
- 「日本衛材」→「エーザイ」(1955年)
- 漢字よりモダンで覚えやすいカタカナを採用
- 参考:エーザイ公式
- コクヨ株式会社
- 「黒田国光堂」→「コクヨ」(1961年)
- 短縮しつつ、親しみやすくブランド力を強化
- 参考:コクヨ公式
- ワコール
- 「和江留」→「ワコール」(1957年)
- 「永遠に名を留める(和江留)」をカタカナ化
- 参考:ワコール公式
カタカナ化は、視認性向上・ブランドイメージ刷新・国際化を狙ったブランディング戦略の一環でした。特に昭和期は「モダンな印象」を強調するため、多くの企業がカタカナ表記を選択しました。
「カタカナ=現代的で進歩的」 という時代背景があったんですね。
おまけ【広島県版】
- マツダ株式会社
- 「東洋工業」→「マツダ」(1984年)
- 創業者・松田重次郎の姓に由来しつつ、国際的なブランド認知度を向上させるためカタカナ表記に変更
- 参考:マツダ公式
- 株式会社イズミ
- 「山西商店」→「いづみ」(1961年)
- 漢字からカタカナへ変更し、全国展開しやすいシンプルな社名に。1980年に「イズミ」として現在の形に
- 参考:イズミ公式
- アヲハタ株式会社
- 「青旗缶詰」→「アヲハタ」(1988年)
- ブランド名と統一し、視認性を向上。デザインする際バラインスが良いので「ヲ」を使用している
- 参考:アヲハタ公式
3. 「マル◯◯」「サン◯◯」が多いのはなぜ?
さて、本題の 「マルヨシ」「サンエイ」」 のようなカタカナ企業名の多さについてですが、これには 日本人特有のネーミング文化 と 商売の縁起担ぎ が影響しています。
「マル」がつく名前の意味
「マル◯◯」という名前が多いのは、「円(まる)=縁起が良い」「丸く収まる」 という考え方があるからです。
また、日本の商家では江戸時代から 「屋号」に◯をつける 文化がありました。
例えば、醤油メーカーの「キッコーマン」も、昔は「亀甲萬(キッコウマル)」という名前だったんです。
商売繁盛を願い、企業名にも「マル」をつけるのが定番だったわけですね。
「サン」がつく名前の意味
「サン◯◯」の「サン」は 「三(さん)」や「Sun(太陽)」 に由来することが多いです。
「三」は縁起の良い数字とされ、「三方よし(売り手・買い手・世間が満足)」という考え方にも通じます。
特に、昭和の企業は 「縁起の良い名前をつける」 ことを重視したため、「サンエイ(三栄)」のような名前が増えたのです。
4. 昭和企業の「カタカナ×漢字」の法則
カタカナ企業名には、実は 「カタカナ+漢字」 というパターンも多く見られます。
例えば:
- フジタカ(富士高)
- カネヨシ(金吉)
- マルゼン(丸善)
これらは 元々の漢字名をカタカナにして、親しみやすさをアップした パターンです。
つまり、カタカナは「新しさ」を演出しながらも、企業の歴史や伝統を感じさせるバランスの取れた表記だったんですね。
まとめ
- カタカナは 視認性が高く、覚えやすく、看板向き
- 戦後、「新しい時代の象徴」としてカタカナ企業名が増えた
- 「マル」「サン」は 縁起の良い言葉で商売繁盛の願いが込められている
- 近年は減少傾向だが、昭和レトロブームでカタカナ店名が再評価されつつある
こうした背景を知ると、カタカナの店名って実は奥深いですよね!
次に街を歩くとき、「マル◯◯」「サン◯◯」を探してみると、新たな発見があるかもしれません。